ポエム
[TOP]
雨上がりをありがとう
今年の彼岸は雨ばかり

濡れそぼつ町の景色は

しんなりして冷ややかに見える

傘をさして墓参りじゃ大変だ

お線香もしけちゃう

そう言うと娘たちが

大丈夫 今まで全部晴れたじゃない

おばあちゃんは晴れ女

お墓に行けば必ず晴れるよ

そうだね

きっと雨雲に文句を言って

あんた うちの子たちが来るんだから

ちーっと遠慮しなさいよ

なんて無理やりどかしそう

母の口真似をすれば

お義母さんならやるな

納得顔であなたが頷く

元気いっぱいな頃の母を

思い出してみんな笑った


車を降りると雨はほとんどやんでいて

傘はいらない

ほらね

私たちが来るのがわかって止めたんだよ

うんうん 揃って確信

坂道を上がり進んでゆくと

たくさんの墓が立ち並び

美しい花が供えられている

雨の中亡くなった人を偲ぶため

多勢が坂をのぼって来たのだろう


墓に着いた途端本当に薄日がさして

うっすら明るくなった

掃除を始めるとどこからか

小さな蝶が飛んできて

私たちのそばをかすめ

花びらのように消えた

おばあちゃんかな

きっとそうだよ

ふたりでにっこり

あなたも相槌


秋の彼岸の墓参り

もう何度目になるんだろうね

桜舞い散るあの日は遠い

だけどあなたの愛は今でもここに

雲を割って降り注ぐ

日差しのようにやわらかく

私たちを包んでくれる

それは途切れることはなく

見失うこともない

空を見上げればあなたがいる

ひらひらと舞う蝶

頬に触れる秋風も

みんなみんなあなただね

降り続いた雨を止め

淡い光で下りて来る


そして いつものように声がした

あんた しっかりやんなさいよ

手を合わせ線香の煙る墓所に立ち

心から言いたいことはひとつだけ

あなたはみんなのおひさまだった

いつも 

今も

ありがとう








22/09/25 20:45更新 / 香弥



談話室



TOP | 感想 | メール登録


まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.35c