ポエム
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七国山花紀行
この坂をのぼりきったら
小さな牡丹園
この前来たのはいつ
忘れたけれどこの道は覚えてる
遠い日あなたと歩いたの
今日はひとりで歩きます

人影まばらな牡丹園で
艶やかな白い牡丹紅い牡丹
ピンクや紫の花々に囲まれると
いつかのあなたが見えるよう

朗らかな笑顔が
楽しそうな姿が
あれから何十年たつのでしょう
たった一度の
やさしいやさしい春だった

七国山は小さな山よ
牡丹園だけじゃなく
花の名所がいろいろある
今日はもう少し周ってみたい

坂を下って右手に行くと
一面菜の花畑
初夏のような明るい陽の下
黄色の海が風にさざめく
春の名残りの美しい景色を惜しみ
菜の花と一緒に記念撮影した

また下ってゆくと薬師池公園
広々とした園内をそぞろ歩けば
池のほとりに優美な藤の花が咲き
薄紫の花房が揺れる
蔓の先に長く垂れる様子が
花かんざしのよう

売店のおじさんがにこにこ笑って
この先のえびね苑もいいよ
行ってごらんと教えてくれた
きれいなお花のおかげで
地元の人とおしゃべりできる
そんなひとときが好き

えびね苑は横道に入り
長い長い階段を上がる
どこまで続くのと後悔した頃
ようやく入口に着いた
今度は下へ下へと降りてゆく

爽やかな新緑が萌え
木もれ陽ゆれるえびねの森は
外界を遮断するように静まりかえって
深い山奥のよう

昨日の雨に濡れて
しっとりした空気の中
少し時期が早いのか
ランによく似た黄色のえびねが
ぽつんぽつんと咲いているだけだ
暗い木立の下で咲く小さな野花
愛らしく可憐な佇まいは
ここまで来てくれてありがとう
そう言ってほのかに笑っている気がする

神秘的なえびね苑を後にして
ゆるゆると階段を降り
坂道を下り切る
麓に着くとスマホを開いて
あちこちで撮った花の画像と
菜の花畑の記念写真を見た

昔歩いた道を辿り
忘れていた宝物を拾った
思い出はこんなふうに
落ちてるものなのか
長い時を経て新たなページを
書き足すように
初めての場所も訪ねた

振り返ると坂の上に
雨上がりの青空が広がる
牡丹 菜の花 藤 えびね
七国山の花巡り
短くて楽しい旅
あの日の続きを歩いた春






22/04/28 08:15更新 / 香弥



談話室



■作者メッセージ
ななくにやまと読みます。となりのトトロに出てくる七国山(しちこくやま)
とは縁もゆかりもありません。
感違いして聖地巡礼するファンがいるとかいないとか(^^)

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