姫藤伝説
里に伝わる古い話
昔 お山の向こうで激しい戦が
あったとな
領主が討たれ一族の者はちりぢりに
逃れたそうな
領主の姫君も従者と共にお山の奥に
隠れたが追手に囲まれ哀れ自らお命を
断ってしまわれた
そののち姫君が儚くなられたその場所には
一本の藤が生えたという
藤はお山の奥深くお社の近くにひっそりと
蔓を伸ばしているそうな
お社は道があまりに荒れ果て定かでないが
時おり信仰心篤き者がお山を懸命に登り
お参りするという
さすればいずこからやら耳に
か細き声が聞こえてくるとか
争うなかれ
のちのちまでも伝えたもう
人の命ぞ花のごとし
大事にしてこそ咲くものぞ
声をたどって近づくとそこには
たいそう美しい藤が一面咲き乱れ
ほんに雅な衣を召した姫御前が
袖を広げたような風情じゃと
そうしてお山の藤はいつしか
姫藤と呼ばれるようになったとな
争うなかれ
姫御前の切なる願いが咲かせし花なり
昔 お山の向こうで激しい戦が
あったとな
領主が討たれ一族の者はちりぢりに
逃れたそうな
領主の姫君も従者と共にお山の奥に
隠れたが追手に囲まれ哀れ自らお命を
断ってしまわれた
そののち姫君が儚くなられたその場所には
一本の藤が生えたという
藤はお山の奥深くお社の近くにひっそりと
蔓を伸ばしているそうな
お社は道があまりに荒れ果て定かでないが
時おり信仰心篤き者がお山を懸命に登り
お参りするという
さすればいずこからやら耳に
か細き声が聞こえてくるとか
争うなかれ
のちのちまでも伝えたもう
人の命ぞ花のごとし
大事にしてこそ咲くものぞ
声をたどって近づくとそこには
たいそう美しい藤が一面咲き乱れ
ほんに雅な衣を召した姫御前が
袖を広げたような風情じゃと
そうしてお山の藤はいつしか
姫藤と呼ばれるようになったとな
争うなかれ
姫御前の切なる願いが咲かせし花なり