ポエム
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見えない絆で繋がって
卒業おめでとう!


娘よ

今日は お前の

高校の卒業式だったね

晴れ晴れとした笑顔で

友人と写真を撮り合う姿が

なんとも微笑ましい


すでに大学を決め

最近では

引っ越しの話や 生活用品の話で

持ちきりだ

これから始まる 新しい生活に

胸躍らせるお前の姿は

本当に 嬉しそうだ…


あっという間に

時は過ぎたけど

安らかに眠る姿は 赤ん坊の時と同じ

お前を背負った

背中の温もりを

もう 思い出せないや…


娘よ

父さんは知っている

お前が もう

この家に戻ってこないことを…


帰省はするさ

でも 今までのように

ずっと一緒に 暮らすことは

もうないんだと…


夜 帰宅しても

お前の部屋に

明かりが灯ることはない

「お帰り!」

明るく 私を出迎える声を

もう 聞くこともない…


私も

18歳で 故郷を離れ

大学へと進学した

卒業後 同県に就職したが

別の場所で結婚し

故郷に帰ることはなかった…


私の兄妹達も 故郷を離れ

父も 10年前に 天へと旅立った

愛猫も去ってしまった実家で

母は一人

瀬戸内の海を

静かに眺めながら 暮らしている…


故郷に帰省した帰り道

私の車が見えなくなるまで

ずっと見送る母の姿に 

いつも 心打たれる…


娘も 私と同じ道を歩むのだ

私は これから初めて

私の母の思いを知ることになる


遠く離れるけれど

気持ちは 近くありたい

今までの暮らしの中で培った

見えない絆で繋がっていれば

心は すぐそこにある


隣に住んでいたって

挨拶するだけの人もいる

同じ職場にいたって

顔を合わせるだけの人もいる


距離じゃないんだ


心で繋がっていれば

たとえ

お前が 地球の裏側にいたって

心は一緒だ


父さんのできることは

もう あまりないけれど

私のかけてきた 言葉や励ましが

どうか 心の支えとなりますように

雨の日も 風の日も

震えるような 凍てつく日も

お前の幸せを

ここから 祈り続けるからね…


娘よ

もう一度 言うよ

卒業 おめでとう!

大きく羽ばたけ

希望の翼よ















23/03/01 16:29更新 / 少年時代



談話室



■作者メッセージ
惜別の時。
そして
新しい未来の扉を開ける時。

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