ポエム
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その花の一欠片
あなたに触れたくなるのは


最後に微笑んでしまうから


雨上がりの川辺に小さな花が咲いた


ただその花をみて愛おしくなったから


だから 私はその花に触れたくなるのです


その花に話しかけるのは


最後にはほほえんでしまうから


その花が流した涙が綺麗だったから


その涙を見た時、私の中に


なにかが流れていくのを感じました


柔らかな花片は痛みを知る未来


あなたに触れる時


日溜まりに似た寛容のもとに
微笑みの花が咲く


雷雨が叫び顔色を変えようと



一欠片ほどの輝きだけは



凍りつきはしなかった



枯れ果てたりもしなかった



季節がまた巡るように



その花をわたしは



静脈が打つように
大切にしたいとかんじている


柔らかな花に


触れて、微笑んで


そうしてなにもかも忘れて
時をすごすことが出来た春でした


今夜は雨が降ります



移り行く花のため息を集めたように
曇る出窓


少し開ければ雨の匂いを微かに運ぶ風


汗にじむ昼間の疲れを流していく


塩と花びらを重ね入れたガラスの小瓶

小さな灯りに
あたためられたて花水塩が香る


春の名残が潮騒と混ざる


夜はやさしく


雨音にささくれが撫でられて


ポロンポロンと弦をはじく


ゆっくりとした落涙音が


とめどなく輪をひろげていく


灯りが窓に月明かりのように浮かんで


横に映る自分の影と目があった


その影に私はキュッと笑ってみせた



 





























23/04/30 23:11更新 / 檸檬



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