ポエム
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追想のエチュード
生まれてはじめて降り立った
人口約3万人の小さな都市が
あの頃の自分の全てだった
美しい雪解け水が流れる川
ひとりもふたりも過ごした部屋
どれもが深く満たされていたんだ

部屋のそばにある私鉄の無人駅
そこから中央線に乗り継いだ寒い日
人混みに紛れて吐いたため息
失った体温が寂寞を生み
白く歪んで二度と戻れないことに
気づくこともなく選んだわかれ道

あの日から遠く隔てられた年月
それは今となってもこの身を生かす
息が詰まるような真空
その中を轟々と流れ落ちる孤独
山間の街で白く小さな手を繋ぐ
あのぬくもりを今も探している

文字の羅列は意味を失って
昇華し今も降り注いで
さながら降り積もる雪の調べ
もしもこの音が届くなら導いておくれ
誰もが行くだろうそちらの世界へ
もう悲しむことのないという世界へ

そう思いながら生きるこの時を
これからもただうたっていくよ
たとえこれが滑稽に見えても
拙い言葉で紡いでいくよ
それは声にも満たないひそかなエチュード
誰にも届くことのないエチュード
23/08/27 10:49更新 / 秋山 青生



談話室



■作者メッセージ
エチュードは「練習曲」という意味だそうです。
練習を兼ねて、音に意識を向けて書きました。
音節がバラついているのはまだまだ未熟な証拠ですが…

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