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生きる理由

生きる理由とは何か
そんなことを考えていた時期があった
理由がなければ生きていく価値もない
そんなことも考えていたこともあった
自分の価値が見出せなくて
生きている理由がわからなくて
居てもよさそうな場所をただ求めていた

今考えればわかること
生きる理由なんてないんだ
たとえば三角形の相似にも
証明するにはやはり理由があって
大体の事象には理由があって
生きることにも何か理由があると
思っていたけれど
無限に続く小数点以下の数字のように
求めきれないのが生命だと
ある時ふっと気付いてしまった

どんな関数を用いても
割り切れない感情の波
それはどんな波形とも違っていて
切り取った立方体の断面から
どろりと溢れる涙の体積が
測ることもできないことを
ぼくは生命の炎を通して見ていた

それは去っていった大切なともしび
ぼくはその背中を追いかけるように
ささやかにも声をあげている
地位も仕事も金も車も
全部とっぱらったらぼくも
その他大勢の自然数
社会の機関を担う交換可能な歯車
ぽつんと取り残された実存として
上げられるものは言葉しかなかった

言葉は声となりただの音になった
突き詰めればただの空気の振動
それでも誰かがその音を聞いて
何かの意味を拾い上げたならと
ぼくはその力を信じるほかない
そんなことを考えながら
ぼくは今日も誰かの声を聞いては
数式をいじくりまわしたり
小難しい演算で金を稼いだりしている



23/10/29 06:26更新 / 秋山 青生



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