治癒までの年月
あの日胸を抉った鋭い痛みが
いつしかケロイドになって
鈍い疼きとなるまでの十年あまり
ぼくは声を出すことすらできなかった
新たな喪失の前に
苦し紛れに上げた声は
それまで溜め込み続けた
たくさんの言葉を織りはじめて
今更ながら自分にもきちんと
痛覚があることを思い出した
そしてもう一度生きることと
向き合わなくてはいけなくなった
それはきみのおかげって言っていいかな
思い出す空虚だった年月
それはただ無為に見送るばかりではなく
きっとぼくが正気を取り戻すために
必要な時間だったのだろう
だからそれすら愛しいと思おう
古傷から流れ出てくる血液が
空気に触れて固まってくるように
ぼくは今日も誰にも伝わらない言葉を
痛みとともに撫で回している
それはきみのせいだって言っていいかな