ポエム
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治癒までの年月

あの日胸を抉った鋭い痛みが
いつしかケロイドになって
鈍い疼きとなるまでの十年あまり
ぼくは声を出すことすらできなかった

新たな喪失の前に
苦し紛れに上げた声は
それまで溜め込み続けた
たくさんの言葉を織りはじめて

今更ながら自分にもきちんと
痛覚があることを思い出した
そしてもう一度生きることと
向き合わなくてはいけなくなった
それはきみのおかげって言っていいかな

思い出す空虚だった年月
それはただ無為に見送るばかりではなく
きっとぼくが正気を取り戻すために
必要な時間だったのだろう
だからそれすら愛しいと思おう

古傷から流れ出てくる血液が
空気に触れて固まってくるように
ぼくは今日も誰にも伝わらない言葉を
痛みとともに撫で回している
それはきみのせいだって言っていいかな

23/10/28 10:13更新 / 秋山 青生



談話室



■作者メッセージ
作った日も全く違ったのですが、前作と何となくセットになりそうな気がします。
ここで投稿すると自分の作品にすら新しい発見があってうれしくなります。

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