きみが遺した季節
ここから見る風景は
金色のさざなみ
ほんのりと香る稲わら
にぎやかに歌う虫の声
美しく世界を包む全てが
かなしみを抱くようになって
どれくらいたったのだろう
ふたりで歩いた街並みは
あれからずいぶん様変わりしたのに
ろくに変わらない自分が
ひとり取り残されたみたいで
息苦しさをごまかすようにぼくは
もう一度ため息をついた
生きることは忘れないこと
死の記憶すら刻み込むこと
そう自分に課したはずなのに
笑顔 ぬくもり 声
いくつもの大切なものが
指の隙間からこぼれてしまった
今年もゆっくりと秋が来て
きみが遺した季節になっていく
花束を用意して川辺に立つ
ぼくはあとどれくらい
きみを想っていられるのだろう
きみを憶えていられるのだろう