ポエム
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老い
人は生まれた瞬間
成長していき
色んなことを覚えて
色んなことが
できるようになっていく

けれど
人生のどこかに分岐点があって
それを境に
人は
色んなことを忘れて
色んなことができなくなっていく
それを老いというらしい

成長とは何かを獲得していくことならば
老いとは今まで獲得したものを
失っていくことなのだろう

今までできていたことが
できなくなっていく
それは自然なことで
その流れに逆らうことは
誰一人としてできない

それを承知して
気丈に受け止められる人もいれば
受け止めきれずに
悲嘆に暮れる人もいる

私の祖母を例に挙げれば
彼女は後者だろうと思う

彼女は
ものが上手く食べられない

他人の話がよく理解できなくないし
自分の話もつじつまがあわなくなっていき
よく話を取り繕う

足腰が弱くなり
上手く歩けない
よたよた歩いては
つまずいて転倒する

排泄のコントロールができなくなり
リハパンツと尿取りパッド
下の世話が欠かせない

できなくなっていく
失っていくことに対し

彼女は何を思っているのだろう?

ただ呆然と長い時間
座って何もしないことが増えてきた

じっと座っているときの表情に
暗い影が見える

時々うつむいて
涙を流し
「情けない」と
愚痴をこぼしている

それらの現実は語っている
彼女は自身が老いていくことを
嘆いているのだろうと

何かを失うこと
できなくなっていくことは
辛く苦しいものらしい

現に祖母は
うちひしがれている

人生は楽あれば苦ありというが
人生の終盤は苦なのかと思うと
この先生きていくのが不安になる
老いによる苦しみを味わうくらいならば
いっそ今死んだ方が
よいのではないかと思ってしまう

けれど
老いによる苦を味わいながらも
人生の締めくくりを
穏やかに閉じようとしている人もいる

その人はどうしてそこまで
気丈でいられるのだろうか?

その答えは
その人生を生きた当人でしか
はっきりと分からないのだろう

けれど
おそらくは
失うできなくなる苦しみが
どうでもよくなるくらい
満足のいく生き方を築きあげたから

老いによる苦なんて
比にならないくらい
今が幸せで充実しているから

老いを
静かに穏やかな心で
受け止められているのではないだろうか?

では
祖母はそうではないから
老いが苦しくて仕方ないということなのだろう

私は
率直に言って
彼女が好きではない

だから寄り添いたい
痛み苦しみを代わってあげたいなんて
思ったことは一度もない

それだけのことを
彼女はしてきたからだ

でも
老いていく様子を
目を背けずに見て
老いに対して
どうしたらいいか考えて
体を支えて一緒に歩くぐらいは
していくから
19/11/12 00:11更新 / アキ



談話室



■作者メッセージ
祖母や、今まであった人生の先輩方を客観的に見て
感じたこと、考えたことを綴りました。
祖母が嫌いな理由は、省きます。
以前投稿した詩「愛せない人」に書かれていますので、気になる方は閲覧していただければと思います。
長文にお付き合いくださり、ありがとうございます。

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