ポエム
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あんなに嫌っていた祖母
今日の午前中は
老健に入所する祖母の
健康診断の付き添いに行った

今後、特養に入所するため
その提出する書類として
健康診断書を作成するのだ

父と共に祖母と対面
半年くらい
面と向かって会っていない

一度、リハビリ風景を見学したが
家族のことも誰も分からない
会話もつじつまが合わない

でも
何も分からなくなった分
表情が明るくなり
性格も穏やかになった感じがした

今朝、祖母と会うと
やはり
穏やかで明るい祖母が
そこにいた

入所させる前
だんだんと体が衰え
分からないことが増え
出来ないことが増えていくことに戸惑い
常に抑うつ的だった祖母

常時見守り、介護が必要なのに
私以外の家族は
それを上手く理解していなかったため
度々見守りが出来ていない時間があり
その結果
ベッドから転倒し
脚を打撲

それを契機に
ショートステイを始めるも
それでも家族は状態、状況を上手く理解しない

介護負担は私に集中
父と協力しながら家事や介護をするも
介護状況は厳しかった

母はワーカーホリック
兄は引きこもりニート
あてにならない

通所やショートステイの送迎を
拒否することもあり
その度に父か私が
仕事を早退して帰宅し面倒を見た

帯状疱疹の薬の副作用が出た際
ほとんど歩けなくなり
トイレにも行けず
「オムツの中でして」と
家族から言われた際
涙をこぼした祖母

私は元々
故人である祖父を虐めていた祖母が嫌いだったが
このときばかりは
同情した

通所とショートステイを併用する生活に
限界を感じ
何度も父を説得して
今年の4月から老健入所

やっと介護生活から
解放された

祖母がいないことが当たり前になって
改めて祖母と触れあってみると
「あ、こんなに可愛い人だったっけ?」
と思った

老健では
お気に入りの男の子の人形を肌身離さず抱え
スタッフさん達の愛情をいっぱい受けて
幸せに生活しているようだった

もし、入所を決めていなかったら
今の祖母はなかっただろう

正直
介護の素人である家族では
祖母の面倒は見切れなかったし
気持ちを受け止めてあげる余裕もなかった

入所させて
祖母も私達家族も幸せになったと考えると
ほっとしたような
切ないような
よく分からない気持ちになる

今の祖母は
衰えていく不安や
分からなくなっていく不安はないのだろう

それだけ
スタッフさん達に良くされているのと

おそらくは
不安が分からなくなっているのだと思う

不安が無くなって
本来の無垢で明るい
少女のような祖母の性格が表面に出た

分からなくなっても
「子供が好き」という性格はそのままで
肌身離さず人形を抱えている

祖母は4人の子供の母で
隣近所さんの子供の面倒もよく見ていたそうだ
いわゆる
肝っ玉母さん

男の子の人形は
おそらく
2歳で風邪をこじらせて
肺炎で亡くなった
父に兄である
私の伯父のつもりなのかもしれない

私は幼少期から
認知症だった祖父を怒鳴り散らす
祖母の姿を日常的に見ていたため
正直この人が苦手だった

祖母が入所してから
「やっと会わなくて済む」と
ウキウキしていたのに

こんな可愛らしい様子を見てしまったら
今まで抱いていた祖母への怒りや嫌悪感が
吹き飛んでしまった

「あ、もう
許してもいいかな」なんて
思ってしまった

そう思っても
家に連れて帰ることは
今後出来ないだろう

要介護3から4に変わってしまい
以前よりも介護の手が掛かる状態では
常時誰も看ることは出来ない

家族共倒れになるよりは
このまま施設の方が良い

それは分かってはいる

特養に入所して
時々、家族が面会するスタイルでも
そういう関わりでもアリだと思う

だけど
今なら何となく分かるような気がする

特養入所の手続きを進めて
祖母が在宅復帰することが出来ないという現実を呑み
涙をじっとこらえて耐えている父の気持ちが

あんなに嫌っていた祖母
他人として接しないと
気がおかしくなりそうだったのに

いつの間にか私は
許してしまっている

いつかこの世を去ったとき
私も涙を流すと思う

だって
文章を書いている今も
涙が止まらない






21/11/18 16:40更新 / アキ



談話室



■作者メッセージ
この詩を書いていて
もう、胸がいっぱいです。

お読み下さりありがとうございます。

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