ただいまとおかえり その4
タケシからの企業の誘い。
それに揺れている自分の気持ち。
ヒロキは
なぜ自分が動揺しているのか分からなかった。
アキホとの今後のことを考えれば
タケシと一緒に起業するなんて考えられない。
タケシなら上手くやれると信じてはいるが
軌道に乗るまでの道のりはそこまで甘くないはずだ。
そんな険しい挑戦に
彼女を巻き込むなんて出来ない。
あくまでも自分は
タケシの挑戦を応援する側だ。
挑戦の伴走者ではない。
それを自分に言い聞かせながら
ヒロキは婚約指輪の入ったケースをバッグに忍ばせた。
そして今日はその日だ。
久々の休日。
ヒロキはアキホと久々に外に出て
夜の散策を楽しんだ。
夜景の綺麗な
人通りの少ない静かなスポットにたどり着き
ヒロキはアキホに向き合った。
ヒロキは
緊張した面持ちで
「アキホ」と呼んだ。
いったん咳払いをして調子を整える。
「アキホ。
いつもありがとう。
これからも俺と一緒にいて欲しい。
だから…」
「ごめんなさい」
ヒロキは
その言葉の意味が分らなかった。
数秒経って意味を理解すると
驚きと戸惑いで頭がいっぱいになった。
「え?
どうして?」
「だってヒロ君
無理しているでしょう?」
自分が無理している?
アキホは自分の何を見てそう感じているのか?
「俺が無理しているって?」
「分からないの?
もっとやりたいことに一生懸命になっても良いのに
無理して私に合わせている。
私のことを大切にしてくれているのは嬉しい。
でも
ヒロ君が無理しているのは正直辛い。
それをこれから先も続けるなら
私はヒロ君と結婚できない」
何てことだ。
アキホには全て見透かされていたのだ。
2人は沈黙したまま帰宅し
それからは同棲を続けるものの
ほとんど会話をしなくなってしまった。
唯一
夜遅くにヒロキが帰宅したときにだけ。
ヒロキが「ただいま」と言うと
「おかえり」とアキホが呼応するという
ルーティンだけが形骸化して残っている。
そのやり取りを繰り返していると
あの頃の母とのやり取りがフラッシュバックする。
こんなことになるなんて。
こうならないように気をつけてきたのに
結局あの人と同じ事をしてしまっている。
そんな自分に嫌気がさした。
そんな気持ちを振り切るかのように
仕事に邁進した。
しかし
気持ちが後ろ向きだからか
だんだんとミスや失敗が目立ち始めた。
家にいても会社にいても
苦しくなっている。
自分は
どうしたら良いのか?
何をしても上手くいかないのに
これで起業なんて…。
ある日の日曜日の昼時。
この日は午前中のみの出勤だったため
早上がりして帰宅した。
「ただいま」
いつものようにヒロキは
そう言って玄関を開ける。
「おかえり」
いつものように
アキホが出迎える。
そして
沈黙が続くのだろう。
「ヒロ君」
沈黙を破るように
アキホが自分の名前を呼ぶ。
少し驚きながら
無愛想に「何?」と応えるヒロキ。
「電話出てちょうだい」
「え?」
アキホは自分のスマホをヒロキに差し出してきた。
電話の画面を見ると非通知だった。
「非通知じゃん。
誰からなの?」
「良いから」
促されるまま
訝しげに電話に出る。
「はい。
どなたでしょうか?」
相手は誰か尋ねると
暫く沈黙が続いた。
何だ?
切ってしまおうかと考えていると
不意に電話の主が応えた。
「ヒロキ
やりたいことをやりなさい」
反射的にヒロキは
電話を切った。
聞き覚えのある声
母のミユキだった。
ーーーーーつづく
それに揺れている自分の気持ち。
ヒロキは
なぜ自分が動揺しているのか分からなかった。
アキホとの今後のことを考えれば
タケシと一緒に起業するなんて考えられない。
タケシなら上手くやれると信じてはいるが
軌道に乗るまでの道のりはそこまで甘くないはずだ。
そんな険しい挑戦に
彼女を巻き込むなんて出来ない。
あくまでも自分は
タケシの挑戦を応援する側だ。
挑戦の伴走者ではない。
それを自分に言い聞かせながら
ヒロキは婚約指輪の入ったケースをバッグに忍ばせた。
そして今日はその日だ。
久々の休日。
ヒロキはアキホと久々に外に出て
夜の散策を楽しんだ。
夜景の綺麗な
人通りの少ない静かなスポットにたどり着き
ヒロキはアキホに向き合った。
ヒロキは
緊張した面持ちで
「アキホ」と呼んだ。
いったん咳払いをして調子を整える。
「アキホ。
いつもありがとう。
これからも俺と一緒にいて欲しい。
だから…」
「ごめんなさい」
ヒロキは
その言葉の意味が分らなかった。
数秒経って意味を理解すると
驚きと戸惑いで頭がいっぱいになった。
「え?
どうして?」
「だってヒロ君
無理しているでしょう?」
自分が無理している?
アキホは自分の何を見てそう感じているのか?
「俺が無理しているって?」
「分からないの?
もっとやりたいことに一生懸命になっても良いのに
無理して私に合わせている。
私のことを大切にしてくれているのは嬉しい。
でも
ヒロ君が無理しているのは正直辛い。
それをこれから先も続けるなら
私はヒロ君と結婚できない」
何てことだ。
アキホには全て見透かされていたのだ。
2人は沈黙したまま帰宅し
それからは同棲を続けるものの
ほとんど会話をしなくなってしまった。
唯一
夜遅くにヒロキが帰宅したときにだけ。
ヒロキが「ただいま」と言うと
「おかえり」とアキホが呼応するという
ルーティンだけが形骸化して残っている。
そのやり取りを繰り返していると
あの頃の母とのやり取りがフラッシュバックする。
こんなことになるなんて。
こうならないように気をつけてきたのに
結局あの人と同じ事をしてしまっている。
そんな自分に嫌気がさした。
そんな気持ちを振り切るかのように
仕事に邁進した。
しかし
気持ちが後ろ向きだからか
だんだんとミスや失敗が目立ち始めた。
家にいても会社にいても
苦しくなっている。
自分は
どうしたら良いのか?
何をしても上手くいかないのに
これで起業なんて…。
ある日の日曜日の昼時。
この日は午前中のみの出勤だったため
早上がりして帰宅した。
「ただいま」
いつものようにヒロキは
そう言って玄関を開ける。
「おかえり」
いつものように
アキホが出迎える。
そして
沈黙が続くのだろう。
「ヒロ君」
沈黙を破るように
アキホが自分の名前を呼ぶ。
少し驚きながら
無愛想に「何?」と応えるヒロキ。
「電話出てちょうだい」
「え?」
アキホは自分のスマホをヒロキに差し出してきた。
電話の画面を見ると非通知だった。
「非通知じゃん。
誰からなの?」
「良いから」
促されるまま
訝しげに電話に出る。
「はい。
どなたでしょうか?」
相手は誰か尋ねると
暫く沈黙が続いた。
何だ?
切ってしまおうかと考えていると
不意に電話の主が応えた。
「ヒロキ
やりたいことをやりなさい」
反射的にヒロキは
電話を切った。
聞き覚えのある声
母のミユキだった。
ーーーーーつづく
26/02/23 17:11更新 / アキ