ただいまとおかえり その3
勉強、サークル、バイトと
それなりに楽しく打ち込んで
順調な大学生活を送った。
就活はそれなりに大変で
第一志望の企業の内定はもらえなかった。
一応、希望の会社ではないが内定はもらえて
そこの会社は
給料はそれなりに良いし
企業の雰囲気も取り組みも良さそうだった。
ヒロキは大学を無事に卒業して就職。
入社した当初はそこまでモチベーションはなかったが
働いていく内にやり甲斐が出てきて
会社に貢献していくことに楽しみを感じるようになった。
しかし
働くことにやり甲斐を感じると同時に
そんな自分への嫌悪感もあった。
仕事に熱中することは楽しい。
楽しいけれど
それだけでは駄目だ。
きちんと、大切な人にも気持ちを向けないといけない。
そうでなければ。
そう感じる度に
仕事の合間にアキホを思い出し
休み時間にラインを入れる。
アキホと
他愛のないラインのやり取りをしていると
少しずつでも不安が消えていくのだ。
仕事を終えてヒロキが帰宅する。
「ただいま」
「おかえり」
そう応えるのは
リビングでくつろいでいたアキホだった。
二人は同棲を始め
それぞれの会社に入社した。
アキホの方が帰宅が早く
いつも料理を作って待っていてくれる。
それがありがたくもあり
同時に切なくもあった。
そこまで思う必要も無いのは分かっていても
彼女を蔑ろにしたくないという気持ちがそうさせてしまう。
「今日の夕飯何?」
ヒロキが尋ねる。
本当は凄く疲れていて
直ぐにでも眠りたい。
しかし
「おかえり」と「ただいま」しかない会話には
絶対にしたくないからこそ
疲れた頭をフル回転させて言葉を紡ぐ。
「今日はね
ふふふ。
カレーライスだよ。
今温めるね」
「ありがとう」
アキホを見ると
彼女もとても疲れて眠そうだった。
自分を気遣って
遅くまで起きて待ってくれている。
それを毎日繰り返させていることが
申し訳なかった。
「ヒロ君
今日もお仕事お疲れ様。
今日のカレーはね
ちょっと焦げて苦くなっちゃったんだけど
それなりに美味しいよ」
屈託のなく笑いながら
自分といることを心から喜んでくれる彼女の優しさに
いつも癒される。
「また料理焦がしたの?
上達するにはもう少しかかるかな〜?」
「そんなこと言わないでよ。
私だって頑張っているんだから。
ほら
温まったよ。
どうぞ〜」
アキホから温かいカレーライスを受け取り
口いっぱいに頬張る。
「あちち!
でも
美味いよ」
「でしょ〜?」
深夜のささやかな
楽しいやり取り。
これがあるから
自分は頑張れるんだ。
アキホとの「おかえり」と「ただいま」を繰り返し3年目。
会社でも一人前に仕事をこなせるようになり
部下も指導するようになった。
会社に貢献し
これから先も支えていくことを誇りに思う自分がいる。
それは仕事が楽しいから。
それもあるが
何よりも
アキホとのこれからの事を考えれば
このまま働き続ける方が安泰だと思うから頑張れるのだ。
そろそろ
彼女に結婚を申し込みたい。
そう思うヒロキであった。
仕事帰りのことだった。
突然なり出すスマホ。
タケシからだった。
「おう、タケシ。
突然どうした?
また呑みの誘いか?」
彼とは大学卒業後も
度々呑みに出かけていた。
「ヒロキ。
疲れているところ悪いな。
こんな遅くに」
「良いよ。
今度はどこに行く?」
「いや、呑みの誘いじゃないんだ。
この前、居酒屋でお前に言っただろ?
俺
新しい会社を立ち上げたいって」
「あぁ!
その話か。
なんだ
準備が上手くいかないのか?」
「上手くいっているよ。
予算も人手も企業するには十分な状態になったし。
後は走り出すだけだよ」
「何だよ
自慢かよ。
まぁ
頑張れよ。
じゃあな」
「待てよ」
スマホを切ろうとすると
焦ったようにタケシが制止する。
「何だよ」
「だからさ
一緒にやらないか?」
「何を?」
「お前とやりたいんだよ。
会社。
一緒に起業しよう」
「え?」
ヒロキは一瞬固まった。
暫くして思考が回り始めた。
タケシと一緒に起業?
タケシは前々から
会社を立ち上げたいと言っていた。
タケシは昔から良い奴だし
やりたいことに全力に取り組めるタイプだ。
そういう奴だから
色んな人に好かれるし
回りを上手く巻き込みながら事をなしていっていた。
だからこそ
起業したいという彼の夢を陰ながら応援していた。
これからも
そうするつもりだった。
だから
「俺
無理だわ。
だって
今の会社で
これからも働きたいし
十分満足だから」
「本当にそう思っているか?」
「本当だよ。
それに
俺
アキホと結婚するんだ。
だから
アキホに迷惑を掛けたくない」
分ってくれよ
タケシ。
お前のことは好きだし
大学の頃みたいに
一緒に馬鹿やって
楽しみたいよ。
でも俺は
今の生活が良いんだ。
「確かに
軌道に乗るまで時間は掛かるかもしれない。
お前の人生だってある。
でも
俺はお前とどうしてもやりたいんだ。
分かってくれよ!」
「何でお前のわがままに付き合わなきゃならないんだよ!」
ヒロキは声を荒げて電話を切ってしまった。
沈黙。
そして静寂。
しかし
ヒロキの心の中は嵐のようだった。
自分の気持ちは
決まっているはずだ。
なのに
何でこんなにも動揺しているのか
ヒロキ自身分からなかった。
ーーーーーつづく
それなりに楽しく打ち込んで
順調な大学生活を送った。
就活はそれなりに大変で
第一志望の企業の内定はもらえなかった。
一応、希望の会社ではないが内定はもらえて
そこの会社は
給料はそれなりに良いし
企業の雰囲気も取り組みも良さそうだった。
ヒロキは大学を無事に卒業して就職。
入社した当初はそこまでモチベーションはなかったが
働いていく内にやり甲斐が出てきて
会社に貢献していくことに楽しみを感じるようになった。
しかし
働くことにやり甲斐を感じると同時に
そんな自分への嫌悪感もあった。
仕事に熱中することは楽しい。
楽しいけれど
それだけでは駄目だ。
きちんと、大切な人にも気持ちを向けないといけない。
そうでなければ。
そう感じる度に
仕事の合間にアキホを思い出し
休み時間にラインを入れる。
アキホと
他愛のないラインのやり取りをしていると
少しずつでも不安が消えていくのだ。
仕事を終えてヒロキが帰宅する。
「ただいま」
「おかえり」
そう応えるのは
リビングでくつろいでいたアキホだった。
二人は同棲を始め
それぞれの会社に入社した。
アキホの方が帰宅が早く
いつも料理を作って待っていてくれる。
それがありがたくもあり
同時に切なくもあった。
そこまで思う必要も無いのは分かっていても
彼女を蔑ろにしたくないという気持ちがそうさせてしまう。
「今日の夕飯何?」
ヒロキが尋ねる。
本当は凄く疲れていて
直ぐにでも眠りたい。
しかし
「おかえり」と「ただいま」しかない会話には
絶対にしたくないからこそ
疲れた頭をフル回転させて言葉を紡ぐ。
「今日はね
ふふふ。
カレーライスだよ。
今温めるね」
「ありがとう」
アキホを見ると
彼女もとても疲れて眠そうだった。
自分を気遣って
遅くまで起きて待ってくれている。
それを毎日繰り返させていることが
申し訳なかった。
「ヒロ君
今日もお仕事お疲れ様。
今日のカレーはね
ちょっと焦げて苦くなっちゃったんだけど
それなりに美味しいよ」
屈託のなく笑いながら
自分といることを心から喜んでくれる彼女の優しさに
いつも癒される。
「また料理焦がしたの?
上達するにはもう少しかかるかな〜?」
「そんなこと言わないでよ。
私だって頑張っているんだから。
ほら
温まったよ。
どうぞ〜」
アキホから温かいカレーライスを受け取り
口いっぱいに頬張る。
「あちち!
でも
美味いよ」
「でしょ〜?」
深夜のささやかな
楽しいやり取り。
これがあるから
自分は頑張れるんだ。
アキホとの「おかえり」と「ただいま」を繰り返し3年目。
会社でも一人前に仕事をこなせるようになり
部下も指導するようになった。
会社に貢献し
これから先も支えていくことを誇りに思う自分がいる。
それは仕事が楽しいから。
それもあるが
何よりも
アキホとのこれからの事を考えれば
このまま働き続ける方が安泰だと思うから頑張れるのだ。
そろそろ
彼女に結婚を申し込みたい。
そう思うヒロキであった。
仕事帰りのことだった。
突然なり出すスマホ。
タケシからだった。
「おう、タケシ。
突然どうした?
また呑みの誘いか?」
彼とは大学卒業後も
度々呑みに出かけていた。
「ヒロキ。
疲れているところ悪いな。
こんな遅くに」
「良いよ。
今度はどこに行く?」
「いや、呑みの誘いじゃないんだ。
この前、居酒屋でお前に言っただろ?
俺
新しい会社を立ち上げたいって」
「あぁ!
その話か。
なんだ
準備が上手くいかないのか?」
「上手くいっているよ。
予算も人手も企業するには十分な状態になったし。
後は走り出すだけだよ」
「何だよ
自慢かよ。
まぁ
頑張れよ。
じゃあな」
「待てよ」
スマホを切ろうとすると
焦ったようにタケシが制止する。
「何だよ」
「だからさ
一緒にやらないか?」
「何を?」
「お前とやりたいんだよ。
会社。
一緒に起業しよう」
「え?」
ヒロキは一瞬固まった。
暫くして思考が回り始めた。
タケシと一緒に起業?
タケシは前々から
会社を立ち上げたいと言っていた。
タケシは昔から良い奴だし
やりたいことに全力に取り組めるタイプだ。
そういう奴だから
色んな人に好かれるし
回りを上手く巻き込みながら事をなしていっていた。
だからこそ
起業したいという彼の夢を陰ながら応援していた。
これからも
そうするつもりだった。
だから
「俺
無理だわ。
だって
今の会社で
これからも働きたいし
十分満足だから」
「本当にそう思っているか?」
「本当だよ。
それに
俺
アキホと結婚するんだ。
だから
アキホに迷惑を掛けたくない」
分ってくれよ
タケシ。
お前のことは好きだし
大学の頃みたいに
一緒に馬鹿やって
楽しみたいよ。
でも俺は
今の生活が良いんだ。
「確かに
軌道に乗るまで時間は掛かるかもしれない。
お前の人生だってある。
でも
俺はお前とどうしてもやりたいんだ。
分かってくれよ!」
「何でお前のわがままに付き合わなきゃならないんだよ!」
ヒロキは声を荒げて電話を切ってしまった。
沈黙。
そして静寂。
しかし
ヒロキの心の中は嵐のようだった。
自分の気持ちは
決まっているはずだ。
なのに
何でこんなにも動揺しているのか
ヒロキ自身分からなかった。
ーーーーーつづく
26/02/20 13:32更新 / アキ