ただいまとおかえり その2
「ヒロキ、お前
夏休みはどうするんだ?
またバイトか?」
大学の昼休みの時間に
友人のタケシから声を掛けられて我に返る。
ふとした時に思い出す
上京した時の母とのこと。
あの時、抱いた母への感情は
未だに失せることはない。
「あぁ、そうだな。
学費を稼ぐためにもバイトしないと」
「でも
お袋さんも出してくれているだろう?」
「そうだけど
生活にゆとりが持てるほどでもないし
何よりあまり
母親を頼りたくないんだ」
「あぁ〜
出たよそれ。
母親を頼りたくない。
俺たち成人したけれど
まだ社会に出ていないひよっこだぜ?
少しは甘えても良いんじゃないか?
それより
お前
大学に入ってから一度も実家に帰省していないだろう?
良いのか?」
「良いんだ。
母親は俺がいない方が。
実際
入学してから一切お互い
連絡を取り合っていないし」
「マジ!?」
タケシの声が食堂中に響き
一気に学生達の注目がこちらに集中する。
タケシは気まずそうに頭を下げながら
再びヒロキに話しかける。
「良いのかよ?
それじゃあまるで
絶縁じゃないかよ」
「まぁ
それでも良いさ」
「それでも良いさだなんて…」
「ヒロ君!
タケシも
ご飯中?」
脇から女子が声を掛けてきた。
ストレートの髪の長いその女子は
声を掛けるなりヒロキの隣の席に座った。
「おう、アキホ。
これから昼?」
タケシが聞くと
アキホは「うん」と頷いた。
「じゃあ
何にする?」
そう言って
ヒロキは財布を取り出す。
「良いよ。
そのくらい自分で払うから。
ヒロ君
自分の生活と学費でカツカツじゃないの?」
「俺は彼氏だぞ?
これくらい普通だよ」
「もう。
ヒロ君のそういうところよ。
じゃあ、A定食」
ヒロキとアキホが付き合い始めてから
半年ほど経つ。
二人は
学科は異なるが
同じサークルで知り合い
すぐに意気投合した。
最初は仲の良い異性の友達であったが
次第にお互いを意識するようになり
いつの間にかそういう関係になっていた。
「アキホ。
お前の彼氏
酷いぞ。
大学は行ってから
実家の母ちゃんとずっと疎遠なんだって。
親不孝も良いところだね」
「タケシ。
他人はそういうデリケートなところに
踏み込むべきことじゃないと思うよ。
ヒロ君には私がいるから大丈夫。
夏休み中も私がついているから」
「うお!
お前らラブラブだな。
熱いね〜」
タケシの冷やかしに
アキホは照れながら「そうでしょ?」と応える。
一方ヒロキは
「まぁな。
アキホがいれば俺は寂しくない」と応えつつも
なんとも言えない心のしこりを感じていた。
大学に入ってから
何度か母親のミユキに電話しようとした。
しかし、その度に
上京する時の母親の
「仕事行ってくる」という冷たい声と後ろ姿を思い出してしまい
連絡が出来ずにいた。
ーーーーーつづく
夏休みはどうするんだ?
またバイトか?」
大学の昼休みの時間に
友人のタケシから声を掛けられて我に返る。
ふとした時に思い出す
上京した時の母とのこと。
あの時、抱いた母への感情は
未だに失せることはない。
「あぁ、そうだな。
学費を稼ぐためにもバイトしないと」
「でも
お袋さんも出してくれているだろう?」
「そうだけど
生活にゆとりが持てるほどでもないし
何よりあまり
母親を頼りたくないんだ」
「あぁ〜
出たよそれ。
母親を頼りたくない。
俺たち成人したけれど
まだ社会に出ていないひよっこだぜ?
少しは甘えても良いんじゃないか?
それより
お前
大学に入ってから一度も実家に帰省していないだろう?
良いのか?」
「良いんだ。
母親は俺がいない方が。
実際
入学してから一切お互い
連絡を取り合っていないし」
「マジ!?」
タケシの声が食堂中に響き
一気に学生達の注目がこちらに集中する。
タケシは気まずそうに頭を下げながら
再びヒロキに話しかける。
「良いのかよ?
それじゃあまるで
絶縁じゃないかよ」
「まぁ
それでも良いさ」
「それでも良いさだなんて…」
「ヒロ君!
タケシも
ご飯中?」
脇から女子が声を掛けてきた。
ストレートの髪の長いその女子は
声を掛けるなりヒロキの隣の席に座った。
「おう、アキホ。
これから昼?」
タケシが聞くと
アキホは「うん」と頷いた。
「じゃあ
何にする?」
そう言って
ヒロキは財布を取り出す。
「良いよ。
そのくらい自分で払うから。
ヒロ君
自分の生活と学費でカツカツじゃないの?」
「俺は彼氏だぞ?
これくらい普通だよ」
「もう。
ヒロ君のそういうところよ。
じゃあ、A定食」
ヒロキとアキホが付き合い始めてから
半年ほど経つ。
二人は
学科は異なるが
同じサークルで知り合い
すぐに意気投合した。
最初は仲の良い異性の友達であったが
次第にお互いを意識するようになり
いつの間にかそういう関係になっていた。
「アキホ。
お前の彼氏
酷いぞ。
大学は行ってから
実家の母ちゃんとずっと疎遠なんだって。
親不孝も良いところだね」
「タケシ。
他人はそういうデリケートなところに
踏み込むべきことじゃないと思うよ。
ヒロ君には私がいるから大丈夫。
夏休み中も私がついているから」
「うお!
お前らラブラブだな。
熱いね〜」
タケシの冷やかしに
アキホは照れながら「そうでしょ?」と応える。
一方ヒロキは
「まぁな。
アキホがいれば俺は寂しくない」と応えつつも
なんとも言えない心のしこりを感じていた。
大学に入ってから
何度か母親のミユキに電話しようとした。
しかし、その度に
上京する時の母親の
「仕事行ってくる」という冷たい声と後ろ姿を思い出してしまい
連絡が出来ずにいた。
ーーーーーつづく
26/02/19 15:10更新 / アキ