夢の世界の先へ その1
今日もお父さんは会社。
お母さんはパート。
食事や寝るところは用意してくれるけれど
2人とも私のことを気にしない。
学校の同級生も先生も
みんなそう。
誰も私のことなんて気にしない。
私がいてもいなくても変わらない。
私が「良い子」でいてさえいれば
何もしてこない。
仮に「良い子」を止めたとしても
どうなるんだろう?
それで嫌がらせをされても嫌だな。
そんな臆病な自分も嫌いだ。
だから私は
この世界で生活することを止めたんだ。
この世界のお父さんとお母さん
学校の友達は違う。
みんな私を気にしてくれるし
楽しくお話ししてくれる。
挨拶だけの関係じゃない。
社交辞令の言葉もない。
「学校が終わったら遊ぼう」
「あの授業つまらなかったね」
そんな
他愛のない会話が出来る。
私が求めていたことを
この世界はみんな叶えてくれる。
だから今日も
この世界を楽しむんだ。
小学校5年生の愛子が不登校になったのは
いつの頃からだろうか。
いつの間にか学校に行かなくなり
食事とトイレと入浴以外は
自室にこもり
一日中寝て過ごすことを繰り返していた。
何でそうなったか
それを気にする者はいないと
愛子はそう感じている。
その証拠に
両親から自分のこの行動を叱責されることもない。
不登校になったからと言って
両親は対して動揺していないし
今まで通り仕事に行っている。
あまりにも変わらなすぎて
愛子は初め寂しさを感じたが
今はそれもない。
だって愛子の日常は
現実ではなく
夢の世界の中にあるのだから。
愛子はいつの間にか
自分の望む世界を夢の中に投影出来るようになっていた。
自分の望んだとおりの環境
そして人物を作り上げ
自分の望んだとおりの人間関係の中で生きる。
それが
夢の中で可能になったのだから
現実世界から夢の世界に日常を映すのに時間が掛からなかった。
「愛子、そろそろご飯よ」
その声に起こされて目が覚めた。
空腹には勝てなくて目が覚めてしまう。
部屋から出て階段を降り
1階の食卓へと向かう。
すると
食卓テーブルの上にプリントとノートが置かれていた。
「それ、いつものあの子からよ」
パートから帰宅した母親が食事の用意をしながら言う。
学校からの宿題を届けてくれるクラスメートがいる。
ミキちゃんとは何度か挨拶を交わしたことがある。
でも、その程度の関係だ。
「ミキちゃんに会ったらお礼を言いなさいね。
いつも届けてくれてありがたいわよね」
多分、担任の先生から言われて届けているのだろう。
宿題は届けられたらやってしまう。
それに、やらないと
届けてくれるミキちゃんにも悪いような気がして
つい反射的にやってしまう。
なかなか「良い子」から抜け出せない弱い自分に嫌気がさす。
愛子は
先生の指示とはいえ宿題を届けてくれるミキちゃんが
何となく鬱陶しく感じていた。
この子のせいで、未だに良い子から抜け出せない自分がいる。
余計なことはしないで欲しいと思っていた。
昼食を食べて食器を片付け
再び夢の世界に入った。
「愛子ちゃん、一緒に帰ろうよ」
そう誘ってくるのはミキちゃんだった。
「えぇっと、今日は1人で帰りたい。ごめんね」
「そう?じゃあね」
そう、断って
ミキちゃんがいなくなってから
他の友達に誘われてその子達と一緒に帰った。
ミキちゃんに対してあまり良い気持ちを持っていないからか
夢の世界でもあまり良い関わり方が出来ない。
そんな自分が情けなくてまた自己嫌悪に陥る。
夢の世界が中心になって
現実の世界なんて興味がなくなった。
そのはずだったけれど
起きる度に目にする
ミキちゃんから届けられた宿題。
ミキちゃんって
どんな子だったっけ?
少しずつ
興味が沸いてきた。
あるときの夕方だった。
何となく目が覚めて
小腹が空いて階段を降りた。
母親はパートで留守にしていたので
自分でお菓子の袋を開けて食べた。
すると、インターホンがちょうど鳴った。
「まさか」
玄関を開けてみると
ミキちゃんだった。
「愛子ちゃん」
ミキちゃんはいつも通り宿題を抱えていた。
届けたらそのまま帰るつもりだったのか
ミキちゃんは動揺している。
愛子も
何となく玄関を開けてしまって
どうしようかと困惑している。
2人の間に暫く
沈黙の時間が続いた。
ーーーーーーーーーーつづく
お母さんはパート。
食事や寝るところは用意してくれるけれど
2人とも私のことを気にしない。
学校の同級生も先生も
みんなそう。
誰も私のことなんて気にしない。
私がいてもいなくても変わらない。
私が「良い子」でいてさえいれば
何もしてこない。
仮に「良い子」を止めたとしても
どうなるんだろう?
それで嫌がらせをされても嫌だな。
そんな臆病な自分も嫌いだ。
だから私は
この世界で生活することを止めたんだ。
この世界のお父さんとお母さん
学校の友達は違う。
みんな私を気にしてくれるし
楽しくお話ししてくれる。
挨拶だけの関係じゃない。
社交辞令の言葉もない。
「学校が終わったら遊ぼう」
「あの授業つまらなかったね」
そんな
他愛のない会話が出来る。
私が求めていたことを
この世界はみんな叶えてくれる。
だから今日も
この世界を楽しむんだ。
小学校5年生の愛子が不登校になったのは
いつの頃からだろうか。
いつの間にか学校に行かなくなり
食事とトイレと入浴以外は
自室にこもり
一日中寝て過ごすことを繰り返していた。
何でそうなったか
それを気にする者はいないと
愛子はそう感じている。
その証拠に
両親から自分のこの行動を叱責されることもない。
不登校になったからと言って
両親は対して動揺していないし
今まで通り仕事に行っている。
あまりにも変わらなすぎて
愛子は初め寂しさを感じたが
今はそれもない。
だって愛子の日常は
現実ではなく
夢の世界の中にあるのだから。
愛子はいつの間にか
自分の望む世界を夢の中に投影出来るようになっていた。
自分の望んだとおりの環境
そして人物を作り上げ
自分の望んだとおりの人間関係の中で生きる。
それが
夢の中で可能になったのだから
現実世界から夢の世界に日常を映すのに時間が掛からなかった。
「愛子、そろそろご飯よ」
その声に起こされて目が覚めた。
空腹には勝てなくて目が覚めてしまう。
部屋から出て階段を降り
1階の食卓へと向かう。
すると
食卓テーブルの上にプリントとノートが置かれていた。
「それ、いつものあの子からよ」
パートから帰宅した母親が食事の用意をしながら言う。
学校からの宿題を届けてくれるクラスメートがいる。
ミキちゃんとは何度か挨拶を交わしたことがある。
でも、その程度の関係だ。
「ミキちゃんに会ったらお礼を言いなさいね。
いつも届けてくれてありがたいわよね」
多分、担任の先生から言われて届けているのだろう。
宿題は届けられたらやってしまう。
それに、やらないと
届けてくれるミキちゃんにも悪いような気がして
つい反射的にやってしまう。
なかなか「良い子」から抜け出せない弱い自分に嫌気がさす。
愛子は
先生の指示とはいえ宿題を届けてくれるミキちゃんが
何となく鬱陶しく感じていた。
この子のせいで、未だに良い子から抜け出せない自分がいる。
余計なことはしないで欲しいと思っていた。
昼食を食べて食器を片付け
再び夢の世界に入った。
「愛子ちゃん、一緒に帰ろうよ」
そう誘ってくるのはミキちゃんだった。
「えぇっと、今日は1人で帰りたい。ごめんね」
「そう?じゃあね」
そう、断って
ミキちゃんがいなくなってから
他の友達に誘われてその子達と一緒に帰った。
ミキちゃんに対してあまり良い気持ちを持っていないからか
夢の世界でもあまり良い関わり方が出来ない。
そんな自分が情けなくてまた自己嫌悪に陥る。
夢の世界が中心になって
現実の世界なんて興味がなくなった。
そのはずだったけれど
起きる度に目にする
ミキちゃんから届けられた宿題。
ミキちゃんって
どんな子だったっけ?
少しずつ
興味が沸いてきた。
あるときの夕方だった。
何となく目が覚めて
小腹が空いて階段を降りた。
母親はパートで留守にしていたので
自分でお菓子の袋を開けて食べた。
すると、インターホンがちょうど鳴った。
「まさか」
玄関を開けてみると
ミキちゃんだった。
「愛子ちゃん」
ミキちゃんはいつも通り宿題を抱えていた。
届けたらそのまま帰るつもりだったのか
ミキちゃんは動揺している。
愛子も
何となく玄関を開けてしまって
どうしようかと困惑している。
2人の間に暫く
沈黙の時間が続いた。
ーーーーーーーーーーつづく
26/01/18 14:51更新 / アキ