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独りぼっちの少年と少女
誰も
僕を気にする人なんていない

そう思っているのは
賑わいのあるとあるゲーセンで
一人ゲームをする少年

少年はゲームをクリアし
何気なくユーホーキャッチャーに向かった

すると
そこには自分と同い年くらいの少女が
ユーホーキャッチャーの中を
じっとのぞいていた

少女は自分に気付くと
「あれ取って」と言って
中のぬいぐるみを指さした

「自分でやりなよ」
「だってお金ないし、やったことないから」

少年ははじめ断ろうとした
しかし
一人でいる少女が自分と重なり
放っておけなくなった

慣れた手つきでぬいぐるみを取ってやると
少女は嬉しそうに微笑んだ
「ありがとう」

少年はそれを見て少し照れた
誰かに喜ばれた経験がなかったからだ

家に帰っても
誰も自分を気にかける人がいない

両親は出来のいい弟を溺愛し
自分に関心を示さない

今日だって自分の食事を作ってもらえず
「コンビニで買ってきなさい」とお金を渡された

いつものことだ
その度に渡された金で
ゲーセンで遊ぶのが日常

「君、お腹が空いてるでしょ?
うちに来ればお菓子があるよ
来ない?」

突拍子もない少女の言葉に思わず
お腹が鳴る

「うん」
二人は少女の家へと向かった

少女の家は普通の一軒家で
裏口からそっと中に入った

ダイニングから
おじいさんと小さな男の子の
笑い声が聞こえる

ドアの隙間からその光景が見えた
二人で楽しそうにラーメンを食べている

少年はふと疑問に思った
「お前の分はないの?」
「ないよ」

少女は当然のように言い放った
その様子を見て
この少女に対する同情というよりも
生きる強さに共感するものを感じた

案内されたのは
奥まった部屋の押し入れだった
そこに沢山お菓子があった

お腹の空いた少年は
夢中でお菓子を頬張った
少女も一緒に食べている

そのときだった
「誰だ!?」
突然、おじいさんが部屋の扉を開けた

「坊主、こんなところで何をしている」
当然、起こった形相で少年を見ている

弁解を求めて少女の方を振り向く
しかし
なぜか、少女の姿がない

「あれ?確かに女の子が僕を
ここに連れてきたのに・・・」
「何を言っているんだ?」

少年はおじいさんに
こっぴどく叱られた
自宅まで連行され
両親が平謝りでおじいさんに謝罪した

その数日後だった
ニュースで
その少女の家が全焼したという報道があった

おじいさんと男の子は無事だった
しかし不審な点があった

なんと
焼け跡から子供と思われる
別の死体が出てきたのだ

それは
行方不明になっていた
そのおじいさんの孫娘だった

その少女は死後
数ヶ月経過していた

後から聞いた話では
おじいさんの娘
少女の母親は未婚で彼女を出産

結婚後、少女の弟を出産してすぐに
別の男ができて蒸発
姉弟は祖父に引き取られた

未婚のうちに生まれた孫娘の存在が
世間体を気にする祖父にとって疎ましくあり

おじいさんは
日常的にネグレクト、虐待を少女に
繰り返していたそうだ

あの家事が
少女の怨念により起きたものかは
分からない

ただ
少年も一人で
あの少女も一人だった

独りぼっち同士が出会い
お互いに惹かれた

少なくともあの時間は
二人は孤独ではなかった

初めてできた友達は
少年の心を助けてくれた

と同時に
少年に助けを求めていたのかもしれない

「あれ取って」
そう言って声をかけてきた
少女のあどけない表情が
少年は忘れられなかった
20/12/20 10:53更新 / アキ



談話室



■作者メッセージ
昨晩、見た夢があまりにむリアルすぎて
思わず文章にしてしまいました。それがこの話です。
詩ではなく小説チックですが
どうしても書かずにはいられませんでした。

お読み下さりありがとうございます。

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