本当は、
僕が君を置いて何処かに行く筈がないだろう。そんな不安な顔をしないで。僕は何処にもいかないから。君を独りにはしないから。けれどもしも。君が独りになりたい時が出来たら、僕以外に君を愛してくれる人が見つかったなら、君は誰の手を取ってもいいからね。ずっとずっと、僕と君は、鳥籠の中、ふたりきりだった。これからも変わらないんだろうと信じていたかった。けれど君は前に進んでいく。僕は何も振り切れず子供のまま大人になってしまった。だからこれは僕の我儘。君から離れたくない、を、君を独りにはしないに置き換えただけの我儘なんだ。本当は鳥籠から出たくなかった僕と、鳥籠の外の世界を求めた君との、報われない救いのない、愛しかなかったそれだけの話。本当は、大丈夫だよ。僕がいなくても君は大丈夫なんだよ。けれど僕には君がいないと駄目なんだ。だから、いつか、君が君の優しさを手放したくなるその日まで、僕の傍にいて欲しい。君を泣かせはしないし、君を傷つけはしないからさ。