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雨に君、傘に僕
「雨に濡れている人がいたら傘を差し出すのは当然のことでしょう?」君はそう言って自分が濡れることも厭わずに僕に傘を差し出した。その雨に濡れることで心毎洗うみたいな顔して、名前も知らない僕にそうすることが自然だとでもいうように傘を差した。僕は唖然として、少し嬉しくて、でも分からなくて「見ず知らずの他人なのにどうして。」と聞いた。そしたら君はおかしそうに「あら、見ず知らずの他人が雨に濡れているのを見過ごさなきゃならない決まりなんてないでしょう?放っておけないんだからあなたは傘の中に入ればいいのよ」と、嬉しいことがあったみたいに笑って答えた。僕の当然と君の当然は、違うのだけれど、そんなことは構わないとばかりに笑う君を見ていたら、なんだかおかしくて笑ってしまった。そんな僕を見てやっぱり君も笑うから、土砂降りの雨の中、僕と君の心だけが晴れていたんだと思うんだ。君に会えたから雨が好きになった。君が傘を差し出してくれたから、僕もそれに倣おうと思った。僕の「当然」は君の「当然」に塗り潰された。けれど、それが心地よかった。
19/10/25 15:56更新 / 雨月 涙空



談話室



■作者メッセージ
こんな人間になりたいなっていう詩です。

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