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どうしたの
336 どうしたの

君は泣いていた
涙を流さずに出来るだけ嗚咽も零さずに
泣いていることが誰にも気付かれないように
痛みを自分だけのものとして受け止めようと
必死に闘っていた
僕はそんな君に
「痛みを痛みのまま乗り越えようとする君は綺麗だけれど
君が自由に泣けもしない世界なら僕が連れ出してあげようか」
とそう訊ねた
けれど君は笑う
不器用な笑い顔で濡れた声で相も変わらず
「大丈夫 この痛みは この世界は私だけのものだから私が背負うわ
あなたにも他の誰にも渡さない
だから私はこの世界で生きていく
自由に泣けないことが何?自由に生きられないことが何?
自分の痛みなら背負えるし不自由だっていいわ
不自由な世界で足掻いてやる
それにあなたが私の痛みに寄り添おうとしてくれたから私は平気よ
あなたがいてよかったわ ありがとう」
そう不遜に涙を流さずに言うんだ
だから僕はもう何も言えなくなって君に手を伸ばした
君をこの世界から連れ出す為じゃなく
君がこの世界でもう一度立ち上がり足掻く姿を見届ける為に
君には言っていなかったけれど僕は君が好きだからね
君の望む世界を見守りたい
大切な君が行き場を失くして途方に暮れた時
一緒に道に迷うことくらいは出来るように
なんて大袈裟だったかな?
20/10/04 21:47更新 / 雨月 涙空



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■作者メッセージ
僕の方が心が乗るのは不思議です

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