彼女は
呼吸が下手な彼女は、いつも不安に押し潰されそうに生きている。肩を竦めて、今にも窒息死しそうなくらいに顔を青ざめさせて、誰が見ても苦しそうなのに、「大丈夫」だと笑ってみせる。僕は、そんな彼女を見るのが辛くて、何がそこまで彼女を追い詰めたのかを知らないまま生きていることが無性に苦しくなる。彼女は今日も笑う。辛いことなんてないのだと、本当に大丈夫だから気にしないで欲しいと、気を遣わせてしまうことに罪悪感を覚えるのだと、そう笑う。彼女はいつまでも変わらないのだろうか。少なくとも僕が出逢った日から今日までずっと、彼女はそう生きている。生きることに向いていないのだろうなと思う。その癖自分以外にはとても優しいのだ。僕はそんな彼女を放っておけない。いつまでも放っておけなくて手を差し伸べたくなる。けれど優しい彼女は、きっとそのことにさえ罪悪感を覚えてまたいっそう殻に閉じこもるんだろう。どうにかしたいと思うのに、どうにも出来なくて僕までが悩む。心から笑って欲しいと思う。休ませたいと思う。けれど僕は無力だ。これ以上傷ついてほしくないのに彼女は何もしなくても傷ついていく。その傷を抱きしめる誰かがいたならいい、と、無力な僕はただ願ってしまう。彼女が彼女であることが、こうも僕を悩ませるのはどうしてなのだろう。