雨
雨に濡れたら傷ついていくような世界で、大抵の人間が建物や傘に隠れている中、何にも隠れずに雨に打たれ、空を見上げている君に出会った。
傷ついてしまうよ、と僕は話しかけて
虹が出るのを待っているの、と君は笑った。
だから僕は君に、傘を差し出した。
入りなよ、僕は言う。
ありがとう、と君は呆ける。いいのに、と。私が濡れても誰も気にはしないのに、とそれが当たり前みたいに笑うから、それが悲しくて、僕は君に傘を差す。そうして、さっきとは違う笑い方で君は顔を綻ばせて、今までよりも感情の込もった様子で言う。
「ありがとう」と。それだけで雨空の傘の下、いつもよりも世界が綺麗に見えた気がしたんだ。
傷ついてしまうよ、と僕は話しかけて
虹が出るのを待っているの、と君は笑った。
だから僕は君に、傘を差し出した。
入りなよ、僕は言う。
ありがとう、と君は呆ける。いいのに、と。私が濡れても誰も気にはしないのに、とそれが当たり前みたいに笑うから、それが悲しくて、僕は君に傘を差す。そうして、さっきとは違う笑い方で君は顔を綻ばせて、今までよりも感情の込もった様子で言う。
「ありがとう」と。それだけで雨空の傘の下、いつもよりも世界が綺麗に見えた気がしたんだ。