マンションのベランダで、手のひらに収まる程の空を眺めながらタバコをふかす。

国立大学に通う廣瀬は、卒論が進まず半分鬱状態にあった。

お風呂に3日も入らず、歯も磨かない。

いっそのこと死んでしまおうか。

あらゆる現実から逃避をした挙句この状態になったのに、
生きることそのものからも逃避しようとしていた。

タバコの火を消して、
スマホゲームのアプリを開く。

既に5000円ほど課金しているが、
バイトもしていないので当然親の金だ。

廣瀬は2回留年していた。

2年前の就職活動はことごとく失敗し、
ほぼ対策せずに受けた今年の教採は最低な結果となった。

未来がない、現状は目も当てられない。

死にたい理由は、もう一つあった。

廣瀬は生理が一週間、遅れていた。