裸になれるデブはいいデブ
携帯をカパリと閉じる音さえもすでに懐かしみを帯びながら
薄型のテレビが毎朝映し出す日本列島なめらかな島
遠くには青みがかった街があり青みがかっているオレかなあ
散会の後にプラカードは下がる 危機は今から立ち上がるところ
限界を超えた荷物で下校する中学生の眼のひかり良し
ひとつぶのホクロみたいな天体の中でもぞもぞ終わる一生
ちいさめの大人が乗ったブランコが前後する申し訳程度に
遊びにも緩急があり鉄棒に子供らもたれかかる午後四時
本来は目立つ色だが時を経て自然な色の安全の旗
子を抱いた母親、男、警官のいずれも黒くして夜がくる
石ころがシューズの中に紛れ込み足裏にある今のこころは
なんとまあ。明るく晴れた日曜に泣いてわめいて怒っている子
半袖にしてもずるずる降りてきて長袖になるオレの生活
柄にもなく深刻なことを考えていたら畳がずいぶん近い
イエスに似た外人に道をたずねられ「わかりません」と三回言った
右耳から入れた言葉が左から抜けてすずしい海へと至る
足払いネコにかけても転ばない 裸になれるデブはいいデブ
おじさんのキャリーバッグはおじさんに引かれそのまま男子トイレへ
屋根の上にソーラーパネルを置いている家の子供の歯科矯正具
膝蹴りを暗い野原で受けている世界で一番素晴らしい俺