缶コーヒーの初恋
冷たい風が吹く中、
僕はいつものようにマンションの窓から
寒そうに外を歩く人たちを眺めていた
あの子はマンションの前に立ち止まると
品定めをするみたいに
左から順に部屋の扉についている
ボタンを見ていった
どのボタンを押そうかと
悪戯な瞳でこちらを見ていた
僕の隣の部屋は出入りが多い
今日もまたもぬけの殻だ
きっと来週あたりには新しい住人が
やってくるに違いない
寒がりな僕は部屋から外を眺めるのが好きだった
そんな時
あの子が僕の部屋のボタンを押したようで
僕は慌ててエレベータで
一気にマンションの玄関まで
降りてきた
玄関から顔を出した僕を見るなり
冷たくなったあの子の小さな手が
僕の身体を優しく包んだ
僕はあの子と手を繋いで
公園まで一緒に歩くことにした
冷たかったあの子の手も
僕の体温でほんのりと温かくなっていく
今の僕にできることはカイロ代わりに
あの子を温めること
公園のベンチに座って二人で
しばらく散歩している犬を見ていた
人目を気にせず
あの子は突然、僕にキスをした
何度も何度もキスをした
とうとう僕は空っぽになった
お別れの時が近づいていることに
僕は気づいていた
自販機の横にある
ここが新しい僕のおうち
あの子は「美味しかった」と言いながら
僕を家の入り口に送ってくれた
ありがとう
あなたに出会えて本当に楽しかった
素敵な出会いと別れ…
そう僕は缶コーヒー
いや、今はもう
ただの空き缶だ
僕はいつものようにマンションの窓から
寒そうに外を歩く人たちを眺めていた
あの子はマンションの前に立ち止まると
品定めをするみたいに
左から順に部屋の扉についている
ボタンを見ていった
どのボタンを押そうかと
悪戯な瞳でこちらを見ていた
僕の隣の部屋は出入りが多い
今日もまたもぬけの殻だ
きっと来週あたりには新しい住人が
やってくるに違いない
寒がりな僕は部屋から外を眺めるのが好きだった
そんな時
あの子が僕の部屋のボタンを押したようで
僕は慌ててエレベータで
一気にマンションの玄関まで
降りてきた
玄関から顔を出した僕を見るなり
冷たくなったあの子の小さな手が
僕の身体を優しく包んだ
僕はあの子と手を繋いで
公園まで一緒に歩くことにした
冷たかったあの子の手も
僕の体温でほんのりと温かくなっていく
今の僕にできることはカイロ代わりに
あの子を温めること
公園のベンチに座って二人で
しばらく散歩している犬を見ていた
人目を気にせず
あの子は突然、僕にキスをした
何度も何度もキスをした
とうとう僕は空っぽになった
お別れの時が近づいていることに
僕は気づいていた
自販機の横にある
ここが新しい僕のおうち
あの子は「美味しかった」と言いながら
僕を家の入り口に送ってくれた
ありがとう
あなたに出会えて本当に楽しかった
素敵な出会いと別れ…
そう僕は缶コーヒー
いや、今はもう
ただの空き缶だ