ポエム
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苺ジャム
玄関を開けると
家中に甘いイチゴの香り
飛び込んだ台所で 母は優しく
おかえり と笑った
いつもの花柄のエプロンで
鍋にはできたばかりのイチゴジャムが
艶やかに溜まっていた
母は一匙すくって 私の口に入れてくれる
まだ少し形のあるイチゴが
トロッと口の中で逃げて 
甘く幸せな一時

「苺ジャム」 ラベルを貼った瓶が並んだ

時は過ぎる
母は亡くなり 
私は少女ではなくなった

甘く幸せな一時は 
本当に甘いだけだった?
まだ少し形のあるイチゴは 
本当にイチゴ?
「花柄のエプロン」「苺ジャム」
その草冠は何かを隠そうとしている
コトコトと煮込んでいた人は
母に化けた魔女 
「ママ、パパはどこ?」

時は過ぎる
老婆になった私は ジャムを作る
そして 母の秘密を知ったとしても
ただ静かにジャムを嘗めるのだろう
20/12/25 21:37更新 / 茜坂



談話室



■作者メッセージ
苺ジャム、これも大切な母との思い出です

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