貴女は独りそのモールを歩く

世代遅れのスマートフォンを手に
中流バックを抱え、急ぎ足で

フラッシュバックと煌びやかな喧騒が
ふいに全ての音階をずらすかの様に

あのカードの楽しみ方を
誰より謳歌してたはずの貴女

貴女はファストファッション店の
ショーウィンドウに映る自分に凍り付く

明日の仕事が全て逆回転するかの様

若者達の何気ない会話と
雑誌の下らない芸能沙汰
死んだ愛犬の写真
冷蔵庫に貼った請求書

貴女は偏頭痛に陥る種をただ
今日も見知らぬ電波に呟き続ける

世代に選ばれたかの様な
華やかな思い出が
今はただ消え無い日焼け跡の様な

サングラスの奥さん