ポエム
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夜半の冬
あたたまった身体で布団に入ると、ほとんど何も聴こえない時間が訪れる。空気が死んでいるみたいだ。嫌悪も愛も絶望も、すべてをその中におさめて、音もなく落ちる、夜が泣いている。寂しい日に限って。欠かさず聞いていたラジオの、周波数さえ忘れてしまいそうな寒いよる。ひどい乾燥でくちびるの端が、痛々しく赤い。日本は電線を地下に埋めないのかって話が、知らないところで進んでいて、もうあの懐かしさに胸を打たれることもなくなるのかと勝手に傷ついた。田んぼの案山子も、軒先にぶら下がるCDも、忘れられたら亡くなるのだろう。次の、その次くらいになれば、存在していた事実すら消されていくのだ、かなしいね。それでも。ピントが歪めば、この世界にしあわせも見えるはずだ。そう信じて、今日も雪を待つ。
18/01/23 06:48更新 / 暮月



談話室



■作者メッセージ
君のこともきっと少しずつ忘れていって、ぼくが死ぬころ、そこが誰もいなかったみたいにぽっかり空いているんだろうか。ユキ、だいすきだよ。

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