ポエム
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すききらい
不図したときの、あの感情はなんだろう。ひとりぼっちの通学路。ずる休みの午前十時。春休みの匂い。心臓の奥がきゅうと鳴って、なんの音も聴こえなくなって、景色が動いたり、呼吸が止まったり。可笑しいね。でも、お金なんかより、もっとずっと価値があった。
明日の空の透明度も、お洒落なジャズも、世界の人口のこともわからない。もう思い出すことはできないし、あの寂しさのこと、ぼくは永遠に知ることはない。ひとが死んだとき、泣ける人でなければならないのだという。クソみたいな道徳心でできあがる美。親を殺しでもしない限り、みんな永遠に子どものまんまだ。
わたしの前世は蝶々でした。来世はきっとウサギです。帰る家がありません、所持金は380円です、隣にきみはいません、でもしあわせです。こんなぼくを、きみだけは、嫌いでいて。
18/10/02 17:37更新 / 暮月



談話室



■作者メッセージ
ずっと謎だった、今も変わらず分からないまま、心臓のすみっこにいるのは、いつでもきみだった。

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