ポエム
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沈むのち掬い
美しくて価値のあるもの。15年前に埋めた、たからばこの在処なんてもうとっくに忘れていて、気づく間もなくぼくはおとなになってしまった訳です。覚えていなくていいよ、きみは、前だけ見て。

プラネタリウムが好きだった。海の底が、恋しかった。きっとみんな帰りたくて、それを知らないだけ、でも、しあわせなんだって。お気楽主義ってやつ。すくわれていたんだ。ぼくは君の肌にふれて初めてぼくでいることができて、きみがいなきゃどうしようもないってこと、いまさら言うと気持ちが悪いね。ごめんね、きらいにならないで。

得意だった算数はいつの間にか数学って怪獣になって、ぼくは、なんとかレンジャーになる夢をみた。おおばかやろうだ。記憶障害のヒーローって、ほんと笑える。

きみが、ぜんぶのあおを抱きしめていた。そらも、みずも、ぼくのことも。好きだよ。きみ以外要らないなんて格好いいことは言ってあげられないけれど、きみの眼の、深く寒いところまで。すくいだすって決めたんだ。過去15年の、酸素ボンベの残量につき。
18/08/18 18:40更新 / 暮月



談話室



■作者メッセージ
やさしさとかうつくしさとか、そんなのはただの自己満足だ。きみとぼくの好きは違う。嫌いも違う。それなのに一緒にいてくれてありがとう。
群青色が、ほんとうによく似合う人だった。

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