ポエム
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下北沢の詠
好きなバンドのライヴティーシャツを着て、自由が丘を歩けたら、強くなれるかもしれないよね。駅前のマックで彼女は笑った。ワンコインでお釣りが来る生活を、過去に経験したものでなければ笑うことはできない。唇の皮が剥けるのをそっと見守ることができないのが、わたしがわたしであることを変えられないように、尊い真実であって欲しい。爪が黒いことを、咎めるひとがいない世界で生きてみたい。指の付け根のピアスも、首筋のちょうちょも、なくてもきっとわたしでいられるけれど、世界にたったひとつのたからものを傷つける、その行為に酔いしれて、生きることのほうが幸せだった。眠いのに無理して液晶をながめることが正義だったころ、いまなんかより、ずっとぼくは孤独なんかじゃなかった。あの線路に立って電車を待つ、夢をときどき見てしまう。わたしのロックンロールは、まだ死んじゃいない。
18/06/25 00:07更新 / 暮月



談話室



■作者メッセージ
胸をはって、好きなものを好きと言える、そんな強さが欲しかったことを、ようやく思い出した。ぼくはきみが好きだったよ。

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