ポエム
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雨の交差点
雨の日にカップルが多いのは、傘の中がふたりだけの世界になるから。背の低いわたしにあわせて、歩幅をちいさく、ゆっくり動く長い脚が、濡れたヒールで靴擦れするわたしを、ひどく優しく、惨めにさせた。いたわるってなんだろうね。僕はやさしい人ですよ、褒めてください撫でてくださいって尻尾をふる犬みたいで、わたしは好きだよ。ひとりぼっちにならない為に、他人とつながりあって、むりやりにでもと、愛に似た何かをはぐくむ。ひだりの肩が濡れている。はやく帰りたいとも思ったけれど、反吐が出るような居心地のよさが、ここにはあった。
重い毛先も反射するアスファルトも、ちっとも嫌味に感じない。濡れた喧騒が、波紋のように空気中でひろがって、目蓋を降ろせばそこは日本じゃなかった。わたしのものも、そうであってほしいと願うほど、密室の楽園で聴いた、きみの声は格別に美しい。
18/05/09 21:04更新 / 暮月



談話室



■作者メッセージ
下がった温度も、粒をはじくビニールも、歪んだ視界も、美しい音色も、そして湿気たきみの顔も。確かにそこに存在していた、わたしのすぐ横で。

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