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幸福の末路





僕は見つめていた、
彼が決意を秘めた表情で
夕日の中に消えていくのを。
しだいに闇がやってきて
僕は二人が永遠に分かれるべき時が来たのを知る。


僕は見つめるしかなかった。
彼が無実の(あるいは有実の)徒を撃つのを。
彼の言葉。「幸せってのは生暖かい銃だよ」と。
彼の銃はただペンより強いだけでなく、
現実に人の命を奪いさえした。

奪われた無残の命の中には、
僕の恋人の姿さえあった。
僕たちの幸福はそこで終わっていた。
僕は彼の幸福の銃の前に 紡ぐ言葉もなく、
闇の奥へ警察と消え行く彼をただ見送った。

僕は恋人の亡骸の前に立ちすくんで、
幸福が果てしない涙へ変わったのを知った。
もう三人で遊ぶことはできないことを思い知った。
彼が幸福と引き換えに何を得たかはわからなかった。
きっと遺された僕の課題なのだろう。

恋人も友も失った僕はひとりで
果てしもなく暗い夕日をみつめていた。
20/07/29 18:40更新 / 毛糸



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