光のある方へ
まだほの暗い朝の道をひとり歩いていた。
突然、遠くから太鼓の音が鳴りひびいた。
その大仰さにめまいがして僕を打ちのめした。
僕は両腕で頭を抱えながらその場でうずくまった。
気づくと僕は病院のベッドの上にいた。
緑の葉を茂らせる大きな木が窓から見えた。
僕もあの木のような偉大さを得たいと思った。
思いながらも僕は寝返りをうつだけだった。
友人のKが少しの光を持って見舞いに来た。
Kは僕を深い闇の中から救い出すと言った。
僕は窓から見える大樹のそばに行きたかった。
Kは僕の車椅子を押して連れていくと言った。
濃い緑の葉をつけた木のそばで一番上を見上げた。
その光景にくらっとした僕の心は天に昇った気がした。
僕の心に光が灯り 少しは偉大に近づいたと思った。
次の日に僕のめまいは治り、病院から去った。
少しずつ光の見えはじめた朝の道を歩いていた。
ふたたび遠くから太鼓の音が聞こえた。
めまいがしかけたが僕はそれを笑顔で受け止めた。
そして大きく手をふって光のある方へと歩き出した。