風
風になぶられて
何か
愛された気分になる
おめでたい私よ
涙に膜を張る瞳で風と揺れる、
躊躇いと恥じらいのワルツよ
生きていることの愛に
答えてくれるのは
いつも、
打ち寄せては引く心の中の海だ
愛することで
私は海をモノにし
桜の花びらを散らす
眠れない闇夜の曜変天目よ
わずかに欠けた黄色い月が
小首を傾げたスプーンとなり
我が心をバニラアイスと掬う
そんな愛の交歓よ
誰が嘆かないでいられたか?
時に曇天の雨が石つぶての罵声である時
誰が嘆かないでいられたか?
石畳に潰れた花びらが血を滲ませて
無念に横たわる時
日常に刺し込む蹂躙の悲鳴は
ただ果てしない空だけが聴き届ける時
手鞠せよ
世界を
大きくバウンドして
何度も掴みはぐることがあっても
私があなたを惜しむように
生きることの涙の風葬よ
惜しむ心を手繰り寄せよう
甘い糸を引けば
未練を弦にして見つけよう
私が私を説き伏せるように
あなたにも一献を
私はあなたと時を分けあいたい
孤立した魂の凍える海辺も
幻の囁きを拾うしかない潮風も
脳天を砕く陶酔となれ
命の喝采を
オーケストラを空耳して
ほら、波が私たちを鼓舞しているよ
25/11/15 09:46更新 / 湖湖