おやゆび姫の心
昔、花屋で働いていた
花を愛していた
赤いチューリップのなかに
おやゆび姫の姿を見ているのが好きだった
人生の生々流転が
私を小さくして
あのおやゆび姫になった気がした
チューリップのなかで寛ぎ
チューリップのなかで歌い
チューリップのなかからあなたを呼んだ
あなたがきっと私を見つけて下さると
チューリップのなかで
私はやまびこのように精一杯、
人生の悲しみと明日への期待を歌い、
あなたに微笑みを投げた
あなたが微笑んだ気がした
しかし、季節は変わり
怒涛の風と雨が寝首を掻く
虎のようにやってきた
嵐よ
チューリップはもみくちゃにされ
今にもちぎれそう
花びらのベッドのなかで転げ回る
風はかまいたちかもしれない
私は小さな悲鳴をあげる
25/10/12 21:25更新 / 湖湖