ポエム
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宿屋
昔、宿屋をやっていました
女主人として
お客様を懸命にもてなしたものです
贔屓にしてくださる、皆様は
美青年ばかり
お友達と呼ばせて頂いて

宿屋には詩が香水として
撒かれていました
砂上の楼閣は透けて
光と甘みと音楽の予感に溢れていました
私はよくまかないのインドカレーを振る舞いました

しかしある時、お客様のなかの
一人の少年が宿屋に火を放ったのです
宿屋は焼け落ち、跡形も無くなりました
私には借金と醜い火傷の跡が残ったのです
火事の現場は雨に濡れた家財が
今でも炭として燻り
その灰色の空の上を亡霊が飛び交っています









25/05/28 01:34更新 / 湖湖

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