肉屋の牛の看板よ

これはサーロイン
ここはTボーン
ヒレはカツに
バラにリブロース
こっちがシチュー向けに
脛とテイル

分類して
値踏みして
名前をつけて

これは偽物やら
これは本物やら

イミテーションずくめで
お洒落してロックンロールする
そんな夢想もあった

でも私は本物なのよ、
そう言わなくちゃね

何者でもないのに生意気な
ありがちな若者だったかもね

タグはある
骨董屋は真贋をつける
優劣は厳しい
過当競争の世界に泣く

でも、大きな意味では
すべては本物なのだと
存在する命や物に宿る尊厳を感じます

一匹の蝶々ヒラヒラとゆく
道の小さなお地蔵さん
小さな石の素朴で愛らしい輪郭

万物
森羅万象

存在よ