ポエム
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路上のアート
あれは三十年近く前のことだ
若い女だった私はインドのボンベイにいた
路上を山盛りのサトウキビを積んだ
大八車のような車が通った
辺りは甘い匂いでぷんぷんだ
私は興味半分で連れと共にカタコトの英語でオーダーした

まず車の上にはレトロな万力構造の絞り機械が載っており
黒い肌をした上半身裸の男の二人組が
時計のようにぐるぐる回って
挟んだサトウキビを絞っていく
サトウキビはベロのように挟まれ
潰され
筋肉質なルンギ1枚を着た男たちの汗が
酷暑のギラギラの太陽のしたに光る
絞られた液体は硝子のコップに移し替えられ
さあ一口!
暑い国でその新鮮で青臭い甘さが最高なのだ

そして、このショーが労働をシンボリックにして
まこと芸術のように美しかったこと
忘れられない







25/05/03 23:27更新 / 湖湖



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