ポエム
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ジャムパン
出会い頭に有るのはいつも希望だ

黴匂う棚の奥に埃に塗れたジャムの瓶がある
家主はパンを買う金にも困っている
だからジャムの瓶を睨んでばかりいる

風の無い部屋よ

希望がノミと槌をくれる
ここは富士山の地下深くにある洞窟だから
入魂して蝉の幼虫のように這い出さねばならない
無理解や偏狭や無関心の
冷淡や優劣の無言の壁を打ち砕き
樹海に飛び出し、
森を走り抜ける
哀れな白骨たちを尻目にして

悪魔は怠惰と疎外と失意に埋もれた私に
友のようにスイーツをくれる
神は愛の概念と試練を光の衣を着て理想美を指す
私はその光源を喰らう虫を少女と呼ぶ

しかしそれはどれも私だ

弱さを柔らかさと喩えるならば
刀の切れ味を我が身に手に入れんと人は歯ぎしりする
竹は風にささめいて笑う

富士の樹海に這い出たなら
私は木立のひっそりとした陰に立ち泣くだろう
その涙は人知れぬ湖になるだろう




25/02/09 14:03更新 / 湖湖



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