先生
お元気ですか？
便りがないのが良い便り
そうなら良いのですが
数十年が経ち
あなたを思い出すのも年々難しくなるのでしょうか
死んだ父の夢を余り見なくなりました
あんなに永い間私の人生を苦しめたのに
死んで消えて仕舞えば私の半生の
葛藤も憎しみも苦しみも孤独も
他人にはどうでもいいことなのが
人生の切なさで
それは私を無念に孤独にして
黙ることを覚える気がしました

あなたの熱い眼差し
信念を伝える時の鋭い尊い空気と
バリッとした背筋
教育者としての人への愛を全身に浴びた遠い日よ
あなたに報いるには余りに弱くだらしない私です
信念の翼を分け合い授かり
人へとバトンを渡すのが正義だから
故郷に錦を飾れないから帰れない
あなたに語れる話がない
苦労話をするのも残念だから
私は迷い子となり
冬の戸の外に立っています
貧しく、寒く、誰もいないのか
年を取る事が淋しい

突如、イタリア歌曲が生きる喜びに震えて
人生の大聖堂がその伽藍に満ちる
そんな気持ちを私は知っているから尚更に嘆くのでしょう