病院の待ちあいで
病院の待合室でエミリー・ディキンソンの詩を読んだ
孤独でも自由で、彼女はかつての私を思い出させた
そして二百年前の女に同胞を感じて
古めかしい自分をクスリ、と笑いたいような気がした
草原の草の人生はいい、というような記述に感心した
最後は干し草となって死の床を超えても納屋で夢を見るのだ、と
神を信じると開ける希望を見て、苦悩の扱い方を思う
私は夜中に世界旅行代わりに世界のドキュメンタリーを見る
世界中の少数民族や野生動物は穢れない古い世界を思わせる
自意識や情報や他人の悪意に犯されて
なにがしかの傷を負った者として
一枚の葉っぱに羨望する
純粋な思いは精油として
詩はエッセンス、フレグランス
でも、それが適わないなら
アッサムティーにオレンジジュースを入れて掻き回すように
犬のように素直な美を飼いならしてみたい
箱庭を愛でる弱さと賢さよ
冒険者が善であればいい
通りを歩くのは兵隊か聖者の行進か
孤独な行軍よ
世界が嵐の前触れでも生きていかねばならない
雑踏のなかのピエロと目が会って見抜かれたなら
そっと思い返すべき人生が欲しい
そっと家の周りの道を掃き清める普通の人をバカにしたら
人を呪わば穴二つじゃないけれどね
つれづれのもの思いが糸を引く午後だ
私の思いも糸となって雲を描き
その雲が湖水に映り
それを見つめるあなたの瞳と混ざるといい
あからさまな知恵ではなくあなたの肌を撫でるように
柔らかな風があなたの心の中に問いを熾すように
私があなたにとって火の精になったり水の精になったり
風として運命や気まぐれを、未来の光について囁いたり、
いつも親しみ深い友人のように、
土のように香ったりしたい
私はいつもそんな風に思いながら詩に臨む
これは書かなくてもいいかもしれない
孤独な女の吐露だ