出会い
突如降り出した雨に鞄を頭にして
駆け込んだ古屋の軒先よ
それは夏の夕立だ
雨は空気を洗い黄昏が満ちる
そして辺りに生まれたつぶつぶの露をキラキラと染め上げる
隣に雨宿りのあなた
ふ、と目が会って恥ずかしくほほ笑む
あ、雨が上がった
あ、ふわり、風が一陣、吹き抜けた
雨の匂いと草の匂い
ふわ、と季節のリボンが解けるよ
舞い上がるような幸福感の夕暮れ
露に濡れたピンク色のコスモスが黄昏に揺れている
ほら、あなたにニコリ
「今晩は。コスモスが綺麗ですね」
そんな風に知らないあなたと知り合ってみたい
りんりん、と鈴虫が鳴き始めて夕闇が
グラデーションで波打って濃くなっていく
金星が甘く西の空に上り指切りげんまん
心が赤い糸を結ぶお針子になる
貫き留めよう
生きている限り、と