美容室で
美容室で鏡を見ていて
ピカソのキュビズムを想像した
夜叉のように修羅のように追われていた時、
ホテルの鏡に映った自分がキュビズムに見えたことがある
あれはあれではなかったか
捻じれを感じるのだ
そのエネルギーを
あれのあとはあれらはだめなんだよ
きっとそうなんだね
ある種のそれらはたぶん秘密の前衛的な福祉なんだ
そっと黙っていよう
そういうことなのかな
砂嵐の後は平凡な優しい可愛らしい世界が愛おしい
一杯のコーヒーが
ネズミの咳が
愛猫の猫背が
涼風が
めぐる春が
雨だれの音が
恐ろしいものを地の底に抱いて