ポエム
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子供心の
私がまだ女の子だった頃、
お祖父ちゃんが大好きだった

じいは川崎大師の朱塗りの門前で言った

ほら、よく覗いてごらん
あれが怖い怖い仁王さまだよ
お守りしてくれているんだよ

お香を焚いて賽銭を済まして、
その頃は大きな池があった
池の傍には鬱蒼とした古木の大柳が隆と風に揺れていた

じいはその大柳のしだれを、それこそ仁王さまのように、
えいっ、と結び、ブランコを作った
そして私を載せて後ろから揺さぶってくれた

高く上がれ、高く上がれ、
もっとだ、もっとだ、
空に届け、空に届け
そら、そら、そら!
ははははは!
きゃっきゃっきゃ!
じい、大好き

ふざけておひげをじょりじょり、
小さかった私の頬に擦り付けたじい、
痛くて泣きそうな顔をした私をははは、と笑って

少女の頃、私の大好きな男の人、
アイスクリームのボックスを買って帰ってくれたじい

あの、はしゃぎながら押してもらった
ブランコの空の高みが忘れられない






23/02/27 08:33更新 / 湖湖



談話室



■作者メッセージ
快感や喜びや一体感の原形ってありますよね。オフセットさんが柳について書いていらして思い出したので私も書かせていただきました。お許しを。

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