ポエム
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キューピッド
メルカトルな彼女は気まぐれで
「私はロシアよ」と歌った
やめてちょうだい、私を赤く塗ったのは誰?
私は深いビリジアンなのに
そんなことはよくあった
私は隠れてしまいたいと思い
闇がいいだろう
そうやって大伽藍の家の大きな黒革のソファに座り
深く沈みこんで沈黙を着た

私は裕福で、凄みがあり、襟は尖り
すべてを持っているのだ
その暗がりには美しい黒豹が金色の瞳を輝かせていた
あの獣を手懐けてみたいと心をくすぐられる
しかし、黙ってばかりはいられない
黙り続ければ胸を虫が食べる
胸に飼えば胸を乗っ取ろうとし

負けると毒虫になると誰かが言っていなかったか

ふと遠くに目を刺す光るものが見えて
それが雲だと気がつくのに少し時間がかかった

あれは綿菓子だろうか

その雲間から漏れる光りは
素足の赤ん坊の天使となって舞い降りる
恋は無一物の心だと
赤ん坊天使が囁いてけらけらと私を笑う

はっと気がつくと2LDKのいつものマンションで
私はうたた寝をしていた
瞼を上げると窓際に庭師の足袋姿が
刈り忘れた木々を忙しなく伐採している

さあ、春までに整えるのだ

眼を細めると白い太陽の光の中に束の間、七色がみえる
それは白金の何気無い午後だ





23/02/20 01:10更新 / 湖湖



談話室



■作者メッセージ
数年前に書いた詩、今もあまり変わらないな、と思って上梓。奴隷制を思いながら、自由と白と黒と、赤と緑と。

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