ポエム
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あの夏の日の午後
夏の午後はうだり、
時はぐにゃりと飴のように曲がり垂れて
静けさの中に僅かに鳥が鳴くか

学校から帰ると家はがらんどう
鍵っ子だった私は食卓の上が楽しみだった
レースの蝿帳(はいちょう)のなかに
母が置いてくれた菓子パンがそっと待っている
丸くてクッキー生地のブールとか
チーズ蒸しパン、
あとは三角の黒糖蒸しパンとか、好きだったな

学校の不良に目をつけられて
トイレで囲まれ、ひっぱたかれ、蹴られ、
ネクタイを引きちぎられて
便器に踏みつけられた時の怒りよ

あの時、三階の窓からその女子を突き落とそうと
瞬間、鬼の心になったよ
殺意の一瞬だ

しかし私はやらなかった
あの瞬間、戦慄し、
窓枠が切り取った
その女子の後ろの
曇り空の目に焼き付いた白よ
あの絶望と憎しみの白よ

トイレで複数の女子に暴力を振るわれている時
英語の女先生が入ってきた
気が付いたのに見て見ぬふりして逃げた事だけは忘れられない

私は学校を脱獄して街をさ迷った
ゲームセンターのあるデパートの屋上で
ちらり、と自殺志願者の事を想った

しかし私は家に帰った

お母さんが黙って迎え入れ
台所に背を向けていた
学校から捜索や問い合わせが来ていた
それは滑稽にしか見えなかった
バカな先生たち
醜い子供たち

母はそっと青い皿に綺麗に三日月に切ったオレンジを並べ
私にどさっと出した
その美しかったこと
忘れられない

母よ





22/12/22 20:51更新 / 湖湖



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