昔、レッドベリーという天才歌手がいた
人を殺したがその歌のうまさで刑を逃れた

昨夜はどこで眠ったんだい、ベイベー
嘘をつくんじゃない
皿洗いなんかしないでいい
おまえと愛し合いたいだけだ

猟銃を持って暗い松林を女を探して徘徊する男に
追われてみたかった若者だった私よ

しんみりと泣きたいような隠された愛の請願よ

人の孤独など珍しいことじゃない
愛を望むなら用意すべきなのは清い心かしら
今に誠実を結ぶことを重ね着して金婚式を迎える老夫婦の愛よ
惜しまれるのはいつも希少な誠実
向かい合い、繭をかけあうように愛の言葉を紡ぎ
愛し合う者たちの秘密の言葉よ

あなたよ
ああ、あなたを失えない
あなたに捧げる時とたったひとつの私を傷つけないで
あなたに傷つけられても私は裸をさらしてそれを受け入れる

大切なことは語ることが難しい
愛を語ることは欺瞞を嫌う
行動のほうが言葉より重いから
あなたの髪の毛が触りたい、と囁くことで震えて
小菊を手折る恥じらいに恥じらえば
そっと黙る以上にチューニングをどうすればいいの
私、乙女チャンネル、できそこないの女で
笑っちゃって、いいじゃないの

釣り堀の魚が口から糸を多く吐いて泣く
清流のヤマメが女王の歌を歌いお前を呼ぶ
そのはざまに存在が揺れている
愛してよ、と叫びながら

フフフ
私、今もこんなよ
いいのよ

■作者メッセージ
Tさんって私のこと愛してくださらないの。なら、そう言ってください。無為に心を募らせても人生の浪費ですものね。やきもち焼かせようとしてるなら成功してますよ。そうだといいのだけれど、うんざりさせてしまったならごめんなさいね。私、あなたみたいに恋の躍動をたくさん経験したことがないから自由にふるまうだけで幸せなんですよ。うんざりでもあるんですけどね。