私信
どうしたか
このごろ手紙を
書きたくなりました
悪筆の蚯蚓の這った字ですが
それでも便箋にペンで書いて
封筒に切手
郵便局に出しにゆくことの
長く忘れていた期待と高鳴り
駅で切符を買うように
郵便局は旅の始発か
遠く離れた友への想い
それぞれの顔が浮び
前略か拝啓か
お元気ですか
メールばかりで
ラブレターのドキドキも
昔の話のよう
そうなれば若いときのように
郵便受とポストも気になり
投函してから何日かは
郵便配達夫も意識する
私信はそんな
秘密の匂いがしたものだ
乾いたメールより
濡れた封書
愛は隠されて
宛先は見せられず
どこか気取った文字も
震えていた
懐かしい思いの
手紙を書いて唇で封する
その感覚!