裏通りの小さなファミレス
ひょんなことで迷いこんだ横丁に
いきなり出くわした小さなファミレスだ
君も覚えていたあの放浪の夏の
寄なしの二人連れが
スーツケース引いて辿り着いた店だよ
のら犬のように腹を空かせ
涼しい居場所を求めて
すっかんぴんの無鉄砲な
旅の終点のぼくら
どこで安い飯を喰うか
安宿はないかとネットで探して
都心をうろついた不安なラビリンス
カード払いが頼みの綱の綱渡り
そんな昼に迷いこんだ店を
通りかかる
そうそうあの窓あの席だ
ワンコインランチのハンバーグ
アイスコーヒーもついていたね
君と疲れた足休め
そんな断片が東京の裏道に
いくつも転がっていた
あれから三年
ぼくらは少しだけリッチになって
そんなファミレスなんか入らない
人は変わり街も変わる
取り残された裏通りに
瓦礫のような店がいまは冬だが
裸木の並木道に見つけた驚き
あの二人連れを探す眼差しが
遠い視線に思えるほどだ