晦日の銭湯で
神保町の古書街も
年末の休みにはいる
夜更けて人も車も通らない
寒空の三日月
カミソリのように切れるか
裏通りにひそりとある
湯の暖簾
梅の湯はたまに通う銭湯だ
番台のばあさんは
御年九十を数えるか
風呂には近所のじいさんと
学生さんがちらほらと
湯に浸かり今年の垢を念入りに
落としていると
女風呂から君の声
ばあさんたちと
世間話が天井に反響しては
雫のぽたり
待ち合わせた時間に出ると
番台に
今年もお世話になりました
よいお年をと
一年の早さを
みんな口にして
巷にタオルをかぶって出たら
また冷たい三日月か